未来予測レポート2013-2025 エレクトロニクス編/ネット・サービス編

新たな「機能飢餓」の時代へ

■ エレクトロニクス編

日本メーカー逆襲のシナリオ。

「機能飢餓」~再び未知の領域へ日本の基幹産業は、エレクトロニクス、自動車、エネルギーを中心とする「ものづくり」である。しかし、新興国が先進国に頼らず低コストで工業製品を生産できるようになり、し烈な価格攻勢が多くの日本メーカーを苦しめている。価格競争で新興国に挑むのは「自殺行為」に等しい。新たな逆襲の戦略立案が急務といえるだろう。

クラウドの浸透と共に、「ハード」という概念そのものが変わり始めている。クライアントは多様化する一方、処理の中心はデータセンター側へシフトしている。今後クラウドが進化する中で、コンテンツやアプリケーションは、ネットワークを通じて「サービス」として利用するものになっていく。このいわば「ハード・ソフトのサービス化」は、エレクトロニクス業界に大きな変革を迫ることになるだろう。

これからは、「ハード」「ソフト」という捉え方を根底から改め、「ハードとソフトは一体のビジネス」と認識すべきであろう。この典型は、アップル社のビジネスモデルだ。2001年のiPod を手始めにiPhone、iPad 、Apple TVを投入し、iTunes Storeでコンテンツ、サービスを提供している。これは「ハード・ネット・ソフト」が融合したプラットフォーム・ビジネスである。ユーザーは「いいモノ」ではなく、「楽しいコト」を求めて製品を購入し、サービスを利用する。エレクトロニクス分野でこれから起こる変化は、一言でいえば安く、早く、大量にという「戦後スキームの終焉」であり、「21世紀型ものづくり」の幕開けである。これからのメーカーは、単にモノを作る企業では存続していけなくなるだろう。そしてこの動きは、ICT、自動車、エネルギー、医療・健康、食料、バイオなど様々な分野へ広がっていく。

エレクトロニクス機器の進化これからのエレクトロニクス業界は、ネットワーク、コンテンツ、開発環境、半導体、ストレージなど、幅広い分野を見ていく必要がある。クラウドによって、産業・事業領域の境目が希薄化していくからである。例えば、「スマートグリッド」は、ネットワークや様々なソフトウエア開発、データセンターの構築から運用管理など、多種多様な技術・ノウハウが必要である。また、電力網を管理する様々なネットワーク機器や太陽光パネル、2次電池などの供給を担うのはエレクトロニクス業界である。

クラウドにつながることによって、「センサー」はエネルギー、医療、農業、住宅、セキュリティなど、幅広い分野で使われるようになる。「センサーネットワーク」を通じて、自動的に大量のデータが取得できる。この「ビッグデータ」を分析することで、様々な「予測」が可能になる。この予測が、業界の常識やビジネスモデルに変革を迫ることになるはずだ。クラウドの進化で「パラダイム」は確実に変わる。「機能飢餓」の時代とは、新しいテクノロジーによって、あらゆる「常識やルール」が変わる時代である。今なすべきは、過去の常識を捨て、未知の領域に向けて創造と挑戦を繰り返すことである。パラダイムの向こう側に突き抜けたとき、日本のエレクトロニクス産業は次の成長ステージを迎える。

■ ネット・サービス編

ビジネスモデルが変わる。

クラウドの波が様々な業界を飲み込む「クラウド」がビジネスにもたらす最大の変化は「サービス化」が進むことである。ブロードバンドで常時接続することで、「コンテンツ」や「アプリケーション」はネットワークの向こう側に置かれ、それらは「サービス」として利用できるようになりつつある。ストレージといったハードで実現していたものも、どんどん「サービス」として提供されるようになってきた。

ハード・ソフトの「サービス化」のキーワードの一つは、「センサーネットワーク」である。好例は建機メーカーのコマツが開発した「KOMTRAX」だ。コマツは、建機にGPSや様々なセンサーを搭載している。そのデータを活用した「KOMTRAX」は、例えば稼働状況を把握した上で定期点検や消耗品の交換を支援したり、位置情報をトラッキングすることで盗難を防止するなどのサービスを提供している。これによって商品価値を高めるだけでなく、継続的なビジネス機会を得ることにも成功している。

センサーも含めた「クラウド・コンピューティング」は、これから本格化する。例えば自動車は、ネット・サービス化することで「走る以上」のものになっていく。ディスプレイは各席に設置され、現在のカーナビ機能以外に、音楽・映像・ゲーム、事故/故障時対応、レストラン/ホテル予約、パーキング/充電案内など様々なサービスが、音声インタフェースの本格普及とあいまって自動車に注ぎ込まれることになる。このサービス化の潮流は、エネルギー、医療・健康、農業、住宅、セキュリティ、さらには流通・販売など幅広い分野に広がり、マーケティングやビジネスモデルの変革につながっていく。

「次世代SNS」のすがたFacebook、Twitterなどの「SNS」、Google、Yahoo!などの「ポータルサイト」は、クラウドの本格化と共に「次世代SNS」と呼ぶべき新しい領域へと進化していく。次世代SNSは、OSに代わる「開発プラットフォーム」、新聞や雑誌に代わる「マスメディア」や電話やメールと並ぶ「コミュニケーションツール」、そしてローカルHDDやサーバーに代わる「データ・ストレージ」という役割を果たすはずだ。

現在、Webページの閲覧、検索、購入履歴などは、時としてマーケティングデータとして利用されている。クラウド時代は、さらにスマートフォンや自動車などの移動履歴、スマートテレビによる番組やゲームの利用履歴、スマートグリッドを通じた家電利用履歴、さらにはゲノム情報や体温・血圧といったライフログなど「ビッグデータ」が、クラウドに蓄積される。現在のマーケティングは、ターゲットを絞り込むというのが一般的であるが、これからは「ビッグデータ」を解析し、顧客一人ひとりの動きを「予測」し、それに先回りするかたちで購入を促し、最適なメッセージングによって満足度を高める「プレディクティブ(予測)マーケティング」が主流となっていくだろう。

ハード・ソフトの「サービス化」は、未知の領域であふれている。「センサーネットワーク」「SNS」「ビッグデータ」などのあらゆる情報がクラウド上にあることで、「サービス化」は驚くほどのスピードで進んでいくはずだ。企業の利益の源泉はハードからサービスにシフトし、「物流」「商流」「金流」が変化する中で、ビジネスモデルの再構築が必然となるだろう。

田中 栄


未来予測レポート・シリーズ 著者
田中 栄
株式会社アクアビット
代表取締役 チーフ・ビジネスプランナー

  • レポート目次
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  • 未来年表

セット内容(発行日:2012年12月28日)

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